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観光地化されるという意味

<米作の原風景を求めて ~少数民族と棚田~9>

旅行期間:2013/12/28~2013/01/04

12/31(火)

起床は予定通り6:30、旅に出ると日本での生活より早く起きる日が続く。本当なら時間を気にせずダラダラしたいのに、貧乏性なのか今でも移動型の旅程を組んでしまう事が多い。今回も例外ではない、一ヶ所の滞在はメインの元陽の2泊が最も長いという有様。それ以外は、ハノイ1泊、夜行列車泊、サパ1泊、河口1泊、夜行バス泊、なのである。

今回の旅は元陽がメインであり、それ以外は刺身のツマに等しい。が、なかなかどうしてここまでのツマが想像以上に楽しかったし、充実していた。今日のトレッキングでベトナムは終了となる。きっと楽しくなるだろう、根拠のない予感を感じていた。

さて、昨夜はたらふく飲んでシャワーを浴びるのが面倒だったので朝シャワー!・・・のつもりだったのだがお湯が出ない。この極寒の中で水シャワーは厳しかったので、頭だけ洗った。首から下は無理だ、拷問か罰ゲームのレベル。

7時になったのでレセプションに降りて行き朝食を頼んだ。メニューは選べる感じ。1.パンとジャム2.パンとチーズ3.パンと玉子迷ったが、炭水化物とたんぱく質をバランス良く採りたかったので、パンと玉子を頼んだ。まぁ定番だな。

朝は冷えるので密かにフォーを期待していたのだがまぁ構わない。後で食べることにしよう。

ピックアップの前にチェックアウトして荷物を預けなければならないので部屋に戻って準備。そこで衝撃の事実。お湯が出る!ということで即効でシャワーを浴びた。これからトレッキングで汗をかくかもしれないが、やはり前日入ってなかったので浴びておきたい。ということで、熱々のシャワーで身体を温めた。

昨日のようにヒートテックを仕込み、トレッキングできる格好に着替えた。同様にカイロも準備。これで寒さ対策も万全である。レセプションに戻り、荷物をストレージ部屋に置くと、そのままピックアップを待てと言われた。支払は後で良いようだ。

今回もピックアップは時間通りに到着。ベトナムは時間に正確なのか?もっともピックアップと言っても黒モン族の人がやってきて別の旅行会社に連れていかれただけだったが。元々の催行会社はサパトラベルメイトという会社だった。よくある仕組みだ。

20分程待っただろうか、退屈だったので町に集まる黒モン族の写真を撮影していた。それにしてもこのサパという町には実に多くの黒モン族が集まるものだと感心させられる。昨日のネーちゃん&スーちゃんの様に片道3~4時間くらいの道のりを歩いて来るのだろうか。このサパという町に観光客が集まり、その観光客が落とすお金の大きさを痛感させられる。

宿からこのサパトラベルメイトのオフィスに連れられて来る途中ネーちゃん&スーちゃんに会った。今日はこのグループトレッキングツアーに参加するので申し訳ないけど昨日のお誘いは断る旨を伝えた。ネーちゃん&スーちゃんはかなり親切だし、作ってくれる食事も美味しいので、サパに行って彼女達と出会った人は是非ガイドを頼んでみて欲しい。

さて、今回のトレッキングツアー参加者は総計9名。1人参加は俺ともう1人の東洋人の男子がいるのみ。経験則だが、旅行者が多い地域ほど1人参加が少ない傾向にあると思う。逆に秘境というか旅行先としてマイナーな地域だとなかなか友達同士で来るのが減るからだろう。シエラレオネとか旅行マニアでなければなかなか一緒に行ってくれる人を探すのは難しいだろう。

そういう意味でベトナムは旅行先としては“メジャー”なのだと実感する。本日のガイドが紹介された。ガイドはランちゃん。23歳の女の子だ。見た目は日本人と区別がつかない。下北沢あたりで歩いていそうな面持ちとファッションだ。ファッションというか民族衣装なのだが。。。説明の時点で既に黒モン族のおばちゃん達が集っている。事前にWebで調べていたのだが、この人達は本来このトレッキングとは無関係な方々なのである。トレッキング中ぬかるんだ場所で助けてくれたりするようだが、村に到着すると恐ろしい勢いでお土産を売りつけてくるらしい。

このまま出発となったのだが、歩き出した時点で既に7~8名の黒モン族がついてきた。ほぼ、マンツーマンでサポートに付く感じだ。なんと贅沢な。そして1人の東洋人男子が日本人であると判明。彼(ゆうき君という)も年末年始の旅行でベトナムに来ているらしい。ちょうどサパに着いた日も同じで、1/3までサパに滞在するとのこと。それだけあれば泊まりのトレッキングもできるし羨ましい限りだ。もちろんそれは俺が元陽を選んだからなので、全く後悔はないのだが『ラーメン屋に入ってラーメンを注文したら、隣のおじさんが食べている餃子が異様に美味しそうに見えてしまう法則』なので仕方がない。短期旅行では選択の連続なのだ。今回の俺の旅はあくまでメインが元陽なのである。

このトレッキングツアーが終わった後は、ラオカイへ戻り国境を越えて中国側の河口まで行く予定なのだが、当初はサパでもう1泊する予定だったのだ。というのもNewYearを迎えるにあたってサパの方が楽しそうだったので。あまりこだわりはなかったが、どうせなら欧米からの旅行者も多いサパのどこかのバーでワーワーやるのも乙だなと。ラオカイにしても河口にしてもひっそりと新年を迎える事になるであろうことが予想できたので。サパに来てからWebで調べたのだが、河口から元陽へ向かうバスは6:10と9:00の2本だけなのだ。中国はベトナムより1時間進んでいるので9:00のバスはベトナム時間で8:00となる。ラオカイ-河口の国境が開くのはベトナム時間で7:00なのでギリギリである。リスクを減らす意味でも今夜のうちに越境して河口に入ってしまうのが安全だと判断した。万が一9:00のバスを逃したら丸一日待ちぼうけを食らうことになる。それだけは避けたかった。

実際、ゆうき君と出会って共に新年を迎える仲間も見つかったので、サパで新年を迎えたいという思いも強かったが、今回の旅の最大にして最後の目的地・元陽に向けて気持ちは昂るのだった。さて、話をトレッキングに戻すと、他のトレッキングツアーとも混ざって30人くらいの集団になって歩いていた。寒かった昨日と違って全く寒さを感じない。むしろ仕込んできたヒートテックのお蔭で軽く汗ばむくらいだ。やはり昨日が特別寒かったのか。霧も昨日ほどではなく視界も良好。棚田も見える。こうでなくてはいかん。付いて周る黒モン族達はトレッキングツアー参加者皆に名前を訊いて回っている。名前、覚えきれるのだろうか。

俺の“専属”はこのおばちゃん。チップ代わりにお土産を買っても良いと思うのだが、買うのならばやはり一番お世話になった人から買いたい。否、買うのならば事前にそれだけお世話になっておこう。そういう戦略で臨むことにした。ガイドのランちゃんの英語は他の黒モン族のそれより格段に聞き取りやすく、どこで学んだのかと訊ねたら、外国人旅行者からと言っていた。それまではハローやサンキューくらいしか言えなかったのだそうだ。ガイドを目指すなら当然とはいえ、なかなか立派なものだ。サパは観光地化されていてガッカリした、という声とそれでも良かったという声を賛否が分かれるという。実際、それは自分自身経験して納得だ。頼んでもいないのにトレッキングに最初からくっついてきて、ぬかるみのある場所では注意してくれたり、手を引っ張ってくれたりもする。もちろん最後にはお土産物を熱烈に売りつけるという目的がある。

だが、同時にさほど悪質なものだとも思えなかった。世界の観光地にはもっと悪質な観光者をターゲットにした手法を散々見てきたからだ。たとえば・No Moneyと言っておいて後でお金を請求する・○○したんだからお金を払え!払わないと帰さない、と 半ば脅すような態度に豹変するサパの町でもそうだが、彼女達は断るとそんなにしつこくない。割ときっぱり諦める。むしろ目的がミエミエ過ぎてどこか憎めない。さらに、どこかお茶目な部分を感じさせてくれるのだ。(それがやり方だ、と思うかもしれないが)

もっと言うならば、「○○は観光地化してしまった」と嘆くのは“先進国”に住む者のエゴイスティックな欲望でしかないと思う。経済的な発展が遅れている地域において、手っ取り早く収入を得る手段として観光産業が挙げられるからだ。産業を興すのに不向きな地域においては尚更だ。自分達は普段経済的に発展した場所で彼らの何倍もの給料を得るのに、休暇を過ごそうと考えていた“昔ながらの”“ノスタルジックな”場所で生々しい経済活動を営むことを否定する資格はないのだ。「発展して高層ビルが立ち並び、古い町並みが消えてしまった。」これも同様に認められない。確かに伝統的・文化的な建物を壊して味気ない高層建設に変わっていく様子には一抹の寂しさを覚えるが、既得権を持っている者が、自らの束の間の休暇を楽しむ為に「古い(経済的な機能を持たない)ままでいろ」と言っているように感じられてしまうのだ。つまり、傲慢さを感じてしまうわけである。山道を歩きながらそんなことを考えていた。

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