MENU

イスタンブールを後にして

目次

登場人物紹介

今回はグループ旅行となるので初めに登場人物を紹介する。

ショウ:トルクメニスタン旅行の起案者、事前手配を担当。トルクメではヤンギ・カラとダムラ村の訪問を熱望。

ノヴァ兎:トルクメニスタンメンバー、北朝鮮やブータン等の一風変わった国を好み、旅行してきた。トルクメでは首都アシガバードの風変わりな様子に期待。

イースト:トルクメニスタンメンバー、シルクロード好き。4年前、ウエストとシリアで出会う。トルクメではメルブ遺跡を最も楽しみにしている。

ウエスト:トルクメニスタンメンバー、シルクロード好き。4年前、イーストとシリアで出会う。トルクメではガスクレーターを最も楽しみにしている。

イスタンブールの定番観光地

5/4(日)

目が覚めてベッドを見回すと、例の謎の人物の荷物はまだ置いてあった。結局、昨夜は取りに来なかったようだ。外を確認するまでもなく、天気が雨であることは分かった。ドミの中にいても雨足が強いことは入ってくる音で理解できたのだ。とりあえず身の回りの荷物を整理し、すぐに観光に出られる状態にしておいた。時計を見るともうすぐ8時になろうとしている。

ノヴァ兎に声をかけ、朝食を食べに行くことにした。今は韓国人の宿泊者が非常に多く、早く行かないと席が埋まってしまうことが予想できた。幸いにも席は確保できたが、8時5分過ぎにはもう席が埋まってしまっていた。宿泊客の9割は韓国人だ。それもほとんどが若者。2012年の夏、長期旅行の中でヨーロッパを周っていた時もかなり韓国人宿泊客が多かったのを記憶しているが、『地球の汚し方』に記載されている宿に行くと高確率で韓国人が多い。というのも『地球の荒らし方』は韓国語版があり、韓国人旅行者もこれを読んで旅する人が多いからだと聞いたことがある。そしてこの時まで知らなかったのだが、韓国にもゴールデンウィークがあるのだとか。この時期は中国も連休なのは知っていたが、韓国にもゴールデンウィークがあるのか。そうだとすればこの時期にこれだけの韓国人旅行者がいる理由も頷ける。早々に席が埋まってしまったのは土砂降りの影響もあるだろう。屋外の席が使えなくなってしまったので、平常時より席数が減っているのだ。

このアゴラゲストハウスの朝食ビュッフェは質も量なかなか充実していて、炭水化物とたんぱく質をバランスよく補充できた。飲み物はジュースから牛乳、アイスティーやコーヒーまで幅広く選べる。ノヴァ兎は先に食事を終え、席が見つからずに右往左往していた人に譲っていた。俺も食べ終えると地下に降りて観光の歯磨きを済ませた。

いざ、観光開始だ。とはいえこの土砂降りなのでテンションが上がらない自分がいたのは否めなかった。まずはトプカプ宮殿へ。もう何度も来ているので場所は迷わない。8:45頃に到着したが、列は既にかなりの長さに達していた。この時に迷ったのがイスタンブールミュージアムパスを買うか否か。観光地にありがちな幾つかの見どころの入場券がセットになったものだ。価格的なメリットはあまりなかったが、並ぶ必要がないというのが大きなメリットだ。このようにどこへ行っても長蛇の列の時は並ぶ時間を節約できるのは大きい。だが、我々は迂闊にも事前に価格をチェックしていなかったので、購入しなかった。結果的に個別に入場して若干安くなったが微々たる差だったので、このパスは買った方が良かったと思う。トプカプ宮殿で45分、アヤソフィアで30分、ブルーモスクで15分ほど入場待ちしたので。昨日のガラタ塔の90分待ち程ではないにしろ、この週末のイスタンブールはどこへ行っても長蛇の列だったのだ。

土砂降りで行列も少し緩和されるかとも思ったが、結局土砂降りなのは朝だけで雨足は弱くなっていき、午前中のうちに雨は止んでしまったのだ。もちろんそれ自体は喜ぶべきことではあったのだが。トプカプ宮殿、アヤソフィア、ブルーモスクと観光したが感想としてはどれも想定通り。決してつまらなかった訳ではない。が、いずれもイスタンブールという世界でも有数の観光地のさらに定番の見どころということで、事前に情報を得てしまっているのだ。なので「こなす」という感覚が強く、新鮮な驚きは感じられなかった、といったのが正直な感想。特にアヤソフィアに関しては工事中ということもあり、少し物足りなさを感じた。一方、ブルーモスク(正式名称はスルタンアフメット・ジャーミィ)は入場料が無料でありながらかなり満足できる水準であった。一応書いておくと、入場料は無料ではあるが、寄付をする箱は置いてある。払わない人もいたが、異教徒の観光客としては、入場料代わりに若干の寄付はした方が良いのではないかと思う。

時刻は既に昼を回っていたし、小腹も空いてきたので近くのレストランで昼食にした。食事は典型的なトルコ料理で何ら真新しいものではなかったが、〆に飲んだトルココーヒーの濃厚さが印象的だった。普段からあまりコーヒーを好んで飲むわけではないのだが、このドロドロした濃厚なコーヒーは結構好みであった。

一般にイスタンブールの四大見どころと言えば、トプカプ宮殿、アヤソフィア、ブルーモスクに地下宮殿を指す。もちろんそれ以外にもスレイマニエ・モスクやグランドバザールエジプシャンバザール、乙女の塔、といった見どころは豊富にあるのだが、ガイド本に掲載される定番という意味ではこの4つだ。3つを見学した時点で、残りの地下宮殿はもういいかな、という気になっていた。それよりは金閣湾を定期船でアジアサイドへ渡ってみたい気分だったので、ノヴァ兎に話すと快諾。

トルコのお土産選び

一旦、宿へ戻って休憩することにし、夕刻に再出発することにした。宿に戻ると、レセプションで2人の日本人旅行者と出会った。初めはその男女は一緒に旅をしているのかと思ったが、話してみると空港で出会って一緒にやってきたのだと言う。男性の彼は、ゴールデンウィークを利用してトルコを旅行しているとのこと。女性の彼女は3ヶ月かけて世界をぐるっと旅行しているらしい。いずれも旅を始めたばかりで、日本を出国してイスタンブールに到着したところだった。トルコは旅行先としてはとてもポピュラーで、それまで米国やヨーロッパ、あるいはオーストラリアあたりしか行ったことのない人が初イスラムとして訪れることが多い。つまり初海外とまではいかないにしろ、初心者の旅人が多い。そのせいか、彼らを含めて、今回の旅はトルクメニスタンがメインでイスタンブールはその前後泊だと告げても、肝心のトルクメニスタンを知らない人ばかりだった。ガスクレーターや地獄の門といったキーワードを出しても知らないという。トルクメニスタンやガスクレーターといった存在は旅行好きにはかなり有名だと思うのだが、その感覚はズレているのだろうか。これがヨルダンあたりだとおそらく出会う旅人のほとんどは知っているのではないかと思う。もちろんこれは単なる憶測に過ぎないのだが。

彼らと話していたところ、彼らもボスポラス海峡クルーズに参加したいというので、一緒に行こうという流れに。その前に彼らは旅行代理店に行ってカッパドキアへの手配と食事を済ませるとのことで、時間を決めずに宿で待ち合わせることにした。一方、その間に我々は配り用のお土産を買いに行くことにした。世界をぐるっと旅する彼女をオハナ、短期旅行で来ている彼を便宜的にドラゴンと呼ぶことにする。

まずはスルタンアフメット駅周辺のお土産屋を覗いてみることにした。ロクム(商品名はターキッシュディライト)が数多く陳列されている。種類も様々だ。だが、値段が高い。大き目の箱で24リラ、つまり1200円もする。もう少し歩いて探してみよう。ということで、ブルーモスクの南に延びているお土産屋の通りを散策。こちらでは同じ商品が12リラ、つまり600円で売っていたのでまずは職場全体への配布用として購入。次に同じチームの人に配る為のお土産だ。本来ならターキッシュコーヒーが良いと思ったのだが、味わうのに手間がかかる為、ターキッシュティーにした。ティーパックなら簡単に飲めるだろうということで、交渉開始だ。1箱6リラだったが複数買うので割引して欲しい、と頼んだところ、5箱買えば1箱サービスするとのことで、それで手を打った。つまり1箱あたり5リラにしてもらったのと同じだ。短期旅行では時間をかけずにさくっと値引き交渉するのがスマートだ。それにしても、お土産を買うということ自体が久しぶりだ。年末年始にベトナムと中国を訪れていたものの、その前は長期の自由旅行だったので、そんなに頻繁にお土産を買うことはできなかったのだ。自分用には特に欲しい物もなく、トルクメで現地版のマトリョーシカを購入していることもあり、トルコの定番すぎる定番ナザール・ボンジュウのマグネットを2つだけ購入した。ホワイトボードや冷蔵庫にメモを貼り付けておくのに役立つだろう。

さて、宿に戻ってみたがレセプションでトモコさんとすれ違い、オハナ&ドラゴンは入れ違いで夕飯を食べに出かけてしまったとのこと。しまった、少し遅くなったか。しかし、元々彼らが夕飯を済ませた後に海峡クルーズに出かける予定だったので、早く帰ってくることを祈った。ちなみにトモミさんはこの宿に常駐している日本人スタッフだ。元々日本では教師をしていたが、各地を旅して、トルコが気に入ってそのままトルコに住むことを決めたとのことだ。スルタンアフメット地区の客引きに辟易していた俺はトモミさんの語るトルコ人の魅力について理解できない部分もあったが、同時に一部は実体験を伴って同意できる部分もあった。トモミさんはトルコ人の人柄が好きと言っていたが、トラムの中で話しかけてきた親切なおじさんをふと思い出していた。もちろん滞在日数も少ないし、訪れたのはイスタンブールの観光エリアだけなのでおそらく田舎の方を訪れたらまた違った体験をできるであろうことは容易に想像できた。もちろんそれはトルコに限ったことではなく、どの国についてもある程度は言えることだと思う。トルクメでも首都のアシガバードでは現地の人もそれほど積極的に絡んできたわけではない。

美味しいサバサンドを求めて

レセプションでネットをしていたが飽きたので屋上のテラスに上がってみた。するとノヴァ兎とトモミさんが談笑しているので混ざることにした。他にもう1人短期旅行の男性もいたが、彼は全行程が4日間なのだそうだ。忙しい。結局30分程さらに話しただろうか。オハナとドラゴンが戻ってきた。トモミさんに紹介されたレストランに行っていたそうだ。この時点で時刻は既に20時近くになっていて定期船に乗るのは事実上無理だった。1路線だけまだ運航してそうな船があったが、今夜出立する俺にとっては少々リスクが高い。が、このまま宿で過ごすには3時間は長い。帯に短し襷に長し、といった塩梅だ。本日到着したオハナとドラゴンはガラタ橋に行ってみたいようだ。するとトモミさんがガラタ橋には皆が行くサバサンドの店だけでなく、アジアサイドにはソース味で唐辛子もかけてくれる店があるのだという。どうせならそっちを試してみたいということでこれから散歩がてら行くことになった。手持ちのトルコリラを使い切るにもちょうど良いな。ということでそのまま出発。

俺は今夜11時頃に宿を出て空港に向かうので最後のイスタンブール観光だ。ノヴァ兎は明日定期船に乗ってウスキュダルへ行ってみるそうだ。イスタンブールは今後もトルコ航空を利用する時にはトランジットで街へ出ることもあるだろう。さて、俺とノヴァ兎にとってはガラタ橋は迷う場所ではない。トラムに沿ってひたすら歩けば到着するのだ。ガラタ橋に到着する頃にはマジックアワーも終わり、完全に夜の雰囲気が醸成されていた。昨日と同じように釣り人を横目に橋を渡る。トモミさんの話で目的のサバサンド屋の特徴は・海沿いの公園の屋台・オレンジ色のシャツを着たおじさんだそうだ。これで分かるのか疑問だった。特に毎日オレンジ色のシャツを着ているのかという疑問を打ち消せなかった。店のユニフォームだとでも言うのだろうか。

だが、多少迷いはしたが見つかった。そこだけ行列ができていたのだ。向かいにもサバサンドの屋台があり、そちらも営業していたものの誰も並ばない。こういう状況では大抵の人は行列ができている店の方に並ぶだろう。トモミさんはこの屋台は韓国人旅行者にも人気だと言っていた。その時も我々の前に韓国人の若い女性が並んでいた。韓国のガイドブックにもこのサバサンド屋の情報が記載されているのだとか。あるいはネットでも情報が広がっているのだという。もちろん我々も並んだのだが、どうも炭の火力が弱く、なかなか鯖が焼き上がらない。かなり待つ羽目になってしまった。この時点で22時前になっていたので、俺はサバサンドを買ったらここで皆とお別れして一足先に宿へ戻って空港に向かうことにした。ようやく順番が回ってきて買えたがサバサンドは6リラ、味は確かにソースと唐辛子だった。正直なところ、これはこれで味付けが好みではなく、そんなに美味しいとも思えなかった。まぁ一般的なサバサンドよりはこちらの方が味がついていて良いかもしれん。ここで皆に別れを告げた。次は日本で会うことになるだろう。

夜の涼しい風を感じながら小走りにトラムの駅へ向かう。残念なことに目の前でトラムは行ってしまった。仕方なく次のトラムを待つが、トラムは10分間隔。結構長い。10分待ってやってきたトラムは満員電車。いつものことだから仕方ないが、これだけいつも混み合っているのだから本数を増やせば良いのに、と思う。いつものようにスルタンアフメット駅で下車し、宿に戻った時は22時半を回っていた。23時に出発すれば24時に空港到着。フライトは1:55なので2時間前だ。荷物のパッキングに予想以上に手間取ったが、予定通り23時にはチェックアウトを済ませて宿を出た。買い込んだお土産が想像以上に嵩張っていたのだ。ティーパックの箱を6つも買ったの無理もないと言えば無理もない。さらにモスクワは相当寒いことが予想される。万が一、ロスバケしてしまった場合に備えて上着を機内持ち込みしやすいようにスイッチバックの上の方に移しておいた。天気予報によると明日のモスクワの天気は雨で最高気温も6℃しかない。この夜でも半袖で過ごせるイスタンブールとは訳が違う。もっともトルクメに行く前のイスタンブールはかなり寒く感じたものだが。この時期は季節の変わり目で天候によって気温も急激に変化する。

イスタンブール終了、そして空港へ

スルタンアフメット駅に向かう途中、ノヴァ兎とその仲間達とすれ違った。ノヴァ兎には「大丈夫なのか?」と声をかけられたが、予定通りに事は進んでいる。そもそもトラム待ちで10分無駄にしたのですぐに追いつかれるのは必然なのだ。何か大きなトラブルがあったわけではないのだが。2度目の別れを告げ、いつものようにトラムに乗り込んだ。この時間帯でも超満員。日本の電車では日曜の夜はここまで混まない。イスタンブール滞在で痛切に感じたのがこれだ。混雑緩和のためにトラムの本数を増やして欲しい。目の前に年配のヨーロッパからと見られる婦人がスーツケースを持って立っていた。話してみると彼女もトランジットでイスタンブールを観光していたらしい。彼女はフランス人で韓国を訪れていたらしい。イスタンブールでのトランジットが17時間くらいあったらしい。

いつもの乗り換え駅でメトロに乗り換えた。ホームではトルコ人のおじさんが話しかけてきた。この大きな荷物ですぐに外国人旅行者だと気がついたらしい。フランス人のご婦人はなかなか率直な発言をする人で、トルコがEUに加盟しようとしていることについてどう思うかと質問していた。俺はすぐに理解できたが、トルコ人の彼は英語があまり得意ではないようで、言っている意味を理解できなかったようだ。ご婦人は、今トルコの経済は良いのでヨーロッパより豊かだ。だけど、EUに加盟したら経済が良くない国の分を負担させられることになってトルコにとっては良くない方向に進む、と言っていた。トルコ経済が好調であることは知っていたが、一方でトルコにおいても貧富の差の拡大は問題となっていて、順風満帆と言えるものでもないと思った。トルコがEUに加盟した場合経済が不調な南欧諸国に支援する側になるのだろうか。ただ、かのご婦人がそのような認識であったのは間違いない。

予定通り24時過ぎに空港に到着。今回はトルクメ往復も含めてこの空港をハブとしてかなり利用した感がある。ご婦人のフライトは朝方の5時頃とのことで、お別れしてチェックインを済ませた。モスクワでの乗り継ぎが12時間あるので一旦ピックアップかなとも思ったが、どうやら成田までスルーの様子。逆に言えば必要な荷物をモスクワで取り出すことができない。が、マイレージの加算をしっかり念押しすることに集中していたせいか、荷物から最も寒さに対応できる首巻きやヒートテックを取り出すのを忘れていた。上に着る防寒着はあったがモスクワの寒さに対応できるかかなり不安だった。

セキュリティゲートを抜けた後のイミグレが長蛇の列だった。24時間空港ではこのような深夜の時間帯においても激混みということが珍しくない。一方、深夜にガラガラの空港にいるというのは、それはそれでまた寂しいものがあるので、どちらが良いかは一概に言えないのだが。トルコのイミグレはいつも簡単だ。質問さえされない。ましてや出国なら尚更だ。ということで例によってラウンジで搭乗時刻まで待ち、時間がきたらゲートへと向かった。今回、帰りのフライトはアエロフロートだ。行きはエティハド帰りはアエロフロート。決してアライアンスが同じということもない、不思議な航空券だがskyscannerでは偶にこのような航空券がヒットする。skyscannerでなくとも、DeNAトラベルのようなWeb系のサイトでは偶に見かける。2011年のGWにコーカサス3ヶ国を訪れた時に利用して以来のアエロフロートだ。初のモスクワが楽しみであると同時にこの旅最後の観光に一抹の寂しさを覚えつつ、機内に乗り込んだ。目指すはモスクワ、この旅の最終目的地!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

目次
閉じる