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国境を越えて

<米作の原風景を求めて ~少数民族と棚田~11>

旅行期間:2013/12/28~2013/01/04

バンに乗ること20分、サパに戻ってきた。予定通り15:30だ。ベトナム、かなり時間に正確である。

ゆうき君とは日本での再会を約束し、ここで別れた。ピックアップは17時なので、それまで宿に戻って待つことにした。精算を済ませて、ミニバンが来るまでネットで情報収集。今夜、中国に越境するので帰国までもうfacebookもTwitterも使えない為、一足先に新年の挨拶を済ませた。※中国ではネットの規制があり、facebookやTwitterといった海外のSNSは利用できない。VPNやBlueSurfaceといった技術・サービスを利用すればアクセスすることは可能なのだが、今回は短期旅行なので良い機会だと判断してあえてSNS系サイトを利用しない方針とした。

またしても時間きっちりにミニバスがやってきた。宿の人にお別れを言って乗り込む。Sapa Hostel、居心地の良い宿なのでまた来ようと思う。次回はバックハ―なりコックリ―なりのマーケットを訪問したい。こういう時に東南アジアは日本から近いので便利だ、再訪が容易で。

他の乗客を全てピックアップすると、ミニバスはサパの町を抜け、山道へ向けて走り出した。

「Bye Bye ,,, Sapa 」

後ろの座席の欧米人の女子が呟くのが聞こえた。そう言いたくなる気持ちはよく分かった。良い宿に恵まれ、トレッキングも十分に楽しめたので俺にとってもサパは居心地の良い町になっていた。もちろんツーリスティックな面があるのも事実だが、それを差し引いてもなかなか魅力的な町に感じられた。「観光地」であることを忌避する人でなければ、訪れて損することはないと思う。決して絶賛はしないがね。

ちょうど18時頃、ラオカイの駅に到着。俺以外はここで下車した。皆、夜行列車でハノイに行く(戻る)のだろう。宿のおかみが運転手に説明してくれていたので、そのまま国境まで運んでくれた。ラオカイ駅から国境までは2km以上あるのだ。何度経験しても陸路での越境は面白い。同時に少しだけ鼓動が早くなる。

このラオカイ-河口の国境は旅行者には定番のルートなので心配するようなことはないのだが。まずベトナム側国境。係官がパスポートを読み取る機械に俺のパスポートをかざしたが反応がないようで苦戦していた。よく分からないが、隣のベテラン?係官に手動での登録方法を教わったようで手打ち処理を行っていた。「もう行って良いのか?」と尋ねたら、面倒臭そうに「di di」と言われた。ベトナムに来る前にうっとおしい売り子がいたら使おうと覚えてきた言葉を最後の最後で自分が使われるとは。

それから橋を渡って中国側へ。こちらはすんなりとは通してくれなかった。イミグレで質問されたのが「なぜこんなに多くの国に行っているんだ?」ということ。「仕事を辞めて長期で旅行をしていた」と説明したが、なかなか納得してくれなかった。5分くらい話して説明した末にようやくスタンプを押してくれた。(やっと通れる)そう思ったのも束の間、別の係官を呼びついて行けと言われた。これ即ち、久々の・・・別 室 送 り!である。

別室では30分くらい質問された。先ほどのイミグレで訊かれた質問を全て繰り返され、定番の「日本での職業、旅行の目的」から始まり、前回中国を訪れた場所と日時、中国への入国は今回で3回目だが、何が目的なのか。12/26に安倍首相が靖国神社を訪問したことで疑われているのだろうか。

・かなり多くの国を短期間に訪れていること

・中国への入国が3回目であること

により、スパイか何かである可能性を確認されたのだと思う。確かに事情を知らない者にしてみれば、この者は何をして生活しているのかと訝しむのも無理はない。

・日本では長期の休暇を取得するのが難しい

・よって旅好きな俺は仕事を辞めて長期で旅行していた

・現在は再就職していて、今回は短期旅行で来ている

・滞在は4日だけですぐ日本に帰国する

旨を説明した。面白かったのは「バックパックに入っている中身」を訊かれた時、「衣服」と「お土産」はすぐに答えられたが、他に何が入っているか出てこなかったのでうっかり「and something」と口走ってしまったことだ。こんな怪しい答え方をしたにも関わらず、特に中身を改められることもなかったが。パスポートに押されたスタンプで「これはどこだ?」と尋ねてきた。モザンビーク、マチュピチュの100周年記念スタンプ、南極。ペンギンのスタンプを見たらそりゃ誰だって気になって尋ねるだろう。

「南極のスタンプだ」

そう答えた後で、わざわざ

「南極にはペンギンが沢山いるんだ」

と付け足しの説明をしたのだが、そんなことを話す自分の様子をかえって怪しく見えるかも、と少し可笑しくなった。黙っていても疑われる。喋っても疑われる。疑惑、というものは厄介なものだ。彼らも本気で問題だと思っていたようではなく通り一遍の質疑応答で解放してくれた。晴れて中国へ入国。国境を抜けてすぐ目の前にあった旅行社に入ってみた。

「Do you speak English?」

「No」

素っ気ない回答である。よし、これでこそ中国だ。英語が通じないからこそ面白い。正直なところ、ベトナムはどこに行っても英語が通じるし、旅行する為の態勢が完全に確立されていて物足りなさを感じていた。まずは今夜の寝床を決めて、年越しそばを食べることにしよう。目の前に広がる漢字のネオンに向け、俺は歩き出した。

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