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独裁と開発と分配と

目次

登場人物紹介

今回はグループ旅行となるので初めに登場人物を紹介する。

ショウ:トルクメニスタン旅行の起案者、事前手配を担当。トルクメではヤンギ・カラとダムラ村の訪問を熱望。

ノヴァ兎:トルクメニスタンメンバー、北朝鮮やブータン等の一風変わった国を好み、旅行してきた。トルクメでは首都アシガバードの風変わりな様子に期待。

イースト:トルクメニスタンメンバー、シルクロード好き。4年前、ウエストとシリアで出会う。トルクメではメルブ遺跡を最も楽しみにしている。

ウエスト:トルクメニスタンメンバー、シルクロード好き。4年前、イーストとシリアで出会う。トルクメではガスクレーターを最も楽しみにしている。

首都アシガバード観光

Volodya(ヴォロージャ)の運転でやってきたのは『The Grand Turkmen Hotel』だ。5つ星ホテルである。当初の予定では、ドバイ組の2人がアハルテケ祭りに参加している間、我々イスタンブール組はホテルで待機、2人が戻ってきたら市内観光を開始する、というものだった。ホテル(宿ではなく)に到着した時には既に12時近くになっていたが、2人はまだ戻ってきていない。これは我々のフライトが遅延したのでまだ戻って来ていないのだろうか。既に到着しているので、ホテルに到着したのでもう戻ってきてくれないと困るのだ。

チェックインの際に、ドライバーのヴォロージャが電話で今ホテルに到着したという連絡を行っていたので、おそらくはこれから戻ってくるはず。こちらのフライトが遅延していたので、まぁ到着してから戻ることにするという算段だろうか。到着する頃を見越して向こうも祭りの場を出る、という効率的な行動は採ってくれないようだ。とりあえず5つ星ホテルのはずだが、設備は日本のビジネスホテル並だった。事前の調査ではプールで泳げるということだったが、時期が早いせいかプールは清掃中。バスタブも底の栓のハマりが悪く、お湯を溜められない。かと言って部屋を変えてもらう程のこだわりもない。仕方がないので、PCやスマホ、カメラの充電をしつつ2人の到着を待つことにした。1時間も待つ頃には待ち疲れしていた。

ただでさえイスタンブールの空港で4時間もの遅延を待っていたのだ。いい加減「待つ」ということに疲れる。せっかく目的地に到着したのに観光できないもどかしさ。もちろん勝手に歩いても大丈夫ではあるのだが、2人がいつ戻ってくるか分からないだけに動けないのだ。ひたすら待ち続け、14時を過ぎた頃。気分転換に場所を変えようと思い、ロビーに移動した。周辺を少し歩いてみたが、街の大きさの割に歩行者が少ない。中央アジアの他の国、キルギスのビシュケクやカザフスタンのアルマティ(旧首都)といった首都はいずれも街が人口より大きく造られている感じがする。とにかくだだっ広いのだ。

ホテルの周りを軽く一周してロビーに戻るとノヴァ兎が来ていた。実際部屋にいてもすることはないので無理もない。再びロビーのソファーで座って待っていると、ホテルのエントランスにバンが停まった。そして見覚えのある顔が2つ、バンから降りてきた。この時、時刻は14:20であった。早速2人と合流し、また旅行会社のスタッフとも挨拶を交わした。と同時に市内観光を何時から開始するかの相談に入った。今すぐに出発したい俺とノヴァ兎だったが準備の為、最短でも15時開始だという。であるならば、と15時開始でお願いする。イーストとウエストはチェックインを済ませ、荷物を部屋に運んで準備をするとのこと。

俺とノヴァ兎は既にかなりウズウズしているので、周辺を散策することに決めた。ホテルから交差点を渡ってすぐの所に公園があるのでそこを歩いてみることにした。公園には多くの像や街灯が並んでいた。ややもすると下品と言って良いくらいの数だ。もう少しバランスというものを意識した方が良いと思うのだが、それも感覚が違うのだろう。大統領の権威を示すにはこれくらいが正解なのかもしれない。無駄遣い?いや、国民には富が行き渡っているので良いのだ、という回答が聞こえてきそうだ。

周辺を散歩してホテルに戻るとロビーに2人が知らない男と座っていた。彼こそ今回の我々のメインガイドとなるOleg(オレッグ)である。どうやらロシア人であるらしい。すかさずロシア語で挨拶をしてみたが、あまり興味がない模様。そして、市内観光はどうやら2時間であるとのこと。うーん、たったの2時間か。それは我々の到着が遅れたからなのだろうか。それとも元々が2時間の予定だったのだろうか。疑問はあったが訊いたところで仕方のない事だったので呑み込んだ。もし、ただ、我々の到着が遅れなかったら、たとえば午前中に市内観光を終えて午後は自由に歩くことができたのかも、と考えてしまった。IFの話はしても仕方がない。今はこれからの事だけを考えよう。

ということで車に乗り込んだ我々だが、アハルテケ祭りの影響か、ホテルの周辺は依然として混み合っていた。なんでも大統領自ら観戦に来ていたとかで、厳重な警備体制が敷かれていたようだ。なるほど、会場への道路が交通規制されてしまうのも無理はない。結局、出発してから市内中心部を脱出するまでに30分近くかかった。車は中心部から郊外へと向かった。まず見えてきたのは卵形の建物だ。なんと形容すれば良いのか正直なところよく分からない。次は四角系の中に球体がある建屋。もうこのあたりは写真を見てもらうしかないだろう。これらの建物を見てノヴァ兎のテンションが上がっていたのが印象に残っている。一方、俺は淡々としていた。確かに奇妙な建物なのだが、人類はこの程度の建物は今までに造ってきたと考えてしまうのだ。それは形において規模においても。もちろんパッと見た印象がまるで近未来都市のような驚きはあるのだが俺には響かなかった、といったところだろうか。人工物では琴線に響かないのだ。

アシガバード市内観光では、ホテル→卵型ビル→四角形の中に球がある建て屋→巨大国旗→中立の塔→独立広場→ホテル の順で周った。言葉ではイメージできないと思うので、写真を見て欲しい部分だ。それにしてもとにかくバブリーな街だ。トルコやフランスの建築家の設計によるビルが多いのだが、いちいち外装が凝っている。単なる外装というより、現代アートのような奇妙な形のビルが多い。そして全てが白く統一されている。一体、天然ガスマネーでどれだけをこの煌びやかな街に注ぎ込んでいるのだろうか。独裁国家にありがちな首都のこの発展ぶりだが、国民にも還元されているのがこのトルクメの特徴。

国民は・電気代が無料・ガス代も無料・水道代も無料・小学校から大学まで授業料全て無料・ガソリンは120リットル/月まで無料 それ以上使った場合でもは1リットル約13円と格安と、これだけ還元している国は独裁国家は言うまでもないとして、所謂民主主義国家にもなかなかないのではないだろうか。「人はただパンのみに生きるに非ず」という有名な言葉があるが、為政者たる者、国民の生活を豊かにする(物質的な意味において)というのが重要な面があるのは否定できない。やはり2時間では観られる所は限られていて、楽しみにしていた魂のモスク(キプチャク・モスク)へは行かずに終わった。もっとも、後で気づいたくらいなので、そんなに楽しみにしていたわけでもなかったのかもしれない。

市内中心部に戻る途中でスーパーマーケットに寄ってもらった。ここで飲料水やお菓子を買い、両替もした。80ドルを現地通貨であるマナトに両替したが、少々多すぎた気もした。ここトルクメではUSドルをそのまま使える場所も多いからだ。ましてや、あまり食事がインクルードされていないとはいえ、観光に関しては全て手配して料金も支払っているのだ。いや、厳密にはこれから払うのだが。

ということで、ホテルのロビーで手配料金の残金を支払った。一人あたり1302ドルだ。これに前金で各自100ドル+振込手数料7ドル、ビザ代で100ドルずつ支払っているので、今回の旅行はとにかくお金を使っている計算になる。なにせこれに航空券代が加わるのだ。支払いを終え、オレッグを見送った後、我々も夕飯を食べに行くことにした。

場所はすぐ近くにあるお奨めされたトルクメ料理の店。というよりバーという方が適切かもしれない。実際、オレッグもバーと言っていた。メニューにはローカルフードがあると言っていたが、その通りシャシャリクやラグマンがあった。俺が選んだのはラグマン。中央アジアに来たらやはりラグマンを食べたくなる。ラグマンは新疆ウイグルが本家であるものの各国で特色がある。トルクメのラグマンはスープが入っているのが特長なのだ。他の中央アジア諸国ではラグマンは焼きうどんみたいなタイプが多い。ローカルビールをお供に料理に舌鼓を打っていると満腹になってきたので、戻ることにした。皆、睡眠時間が足りているとは言い難く、今夜は早めに休みたいのだ。そして明日も早い。8時のフライトであり、6時40分にロビーに集合なのだ。朝食はランチボックスにしてもらうよう、オレッグを通じてホテルのスタッフにお願いしておいた。明日のマリーへの航空券は既に送迎のドライバーから受け取っていたが、ガイドへの手紙をオレッグから預かった。正直なところ、メルブ遺跡は日程の中で最も興味がないものなので、あまり期待はしていないのだ。現地人の写真を撮る機会でもあれば良いな、と考えていた。

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